建設産業経理研究機構は、日本の建設産業の会計制度の中核的研究機関としての役割を的確に果たすべく、以下の3つの研究会を運営しております。  

 

建設業会計基準の在り方に関する研究会

 現在、世界における会計基準のコンバージェンス活動は、国際財務報告基準(IFRS)のアドプションの動向を含みつつ、着々と具体化しており、わが国においても、数年先の実現についてその結論を明確にしていくことが求められています。ただし、わが国においては、2011年の3.11大震災の経済活動に対する深刻な影響とそこからの適切な脱却に対して喫緊の対応を実現していくことが不可欠であることから、本件における決断を先送りする動きも十分に理解できるところです。

 いずれにしても、ここ数年における企業会計制度の新構築に関する論議の方向は、各界(特に経済界)に重大な影響を与えることになります。そのことは、工事契約に関する会計や工事収益の認識に係る会計について、その方向性を的確に見極めていかなければならない建設業界においては、固有の議論をもって前向きな検討体制を確立する必要があるものと考えています。

 建設業界の会計制度は、長い間の業法会計(建設業法を基本とする会計)という特徴とともに、入札、契約等の公的機関との関わりを整備するための会計や経営事項審査という企業経営評価における会計情報の在り方といった、より具体的な検討課題を有しています。これらは、上場会社、非上場会社、大会社、中小会社等の混在する形で制度が維持されており、問題をさらに錯綜したものにしています。

 ここに至って、会計情報に関する調査研究のための体制は、特定組織における個別の関心で進めていくべき課題とともに、建設業界共有の課題として議論すべき大局観のある課題の存在が急速にクローズアップされてきています。具体的には、現在、業界団体や各種研究機関等において別個に進められている課題整理から、統一的、総合的な観点からの課題整理の役割を担う組織や機能の創設が不可欠との認識のもと、「建設業会計基準の在り方に関する研究会」を設置し、検討を進めています。

 

 建設業における収益認識に関する会計基準研究会 委員名簿 (50音順、敬称略)
石原 裕也 専修大学商学部 教授
大津 大次郎 有限責任あずさ監査法人、公認会計士
桑原 正行 駒澤大学経営学部 教授
鈴木 登樹男 有限責任監査法人トーマツ、公認会計士
諏訪部 修 (副査) 新日本有限責任監査法人、公認会計士
中川 政人 新日本有限責任監査法人、公認会計士
丹羽 秀夫 公認会計士・税理士
万代 勝信 (主査) 一橋大学大学院商学研究科 教授
弥永 真生 筑波大学大学院ビジネス科学研究科 教授
山田 康裕 立教大学経済学部 教授

 

オブザーバー
国土交通省 土地・建設産業局 建設業課
一般財団法人建設業振興基金


〇 当財団は、企業会計基準委員会より公表された「収益認識に関する会計基準(案)」に対するコメントを、平成29年10月17日に提出しました。







建設業における管理会計に関する研究会

 企業会計は、一般的に「財務会計」と「管理会計」に大別されます。財務会計は、制度や法規に基づく会計情報で、株主や金融機関などの外部利害関係者に対して開示(ディスクロージャー)するためのルールです。
 これに対して、管理会計は、経営者が自ら活用する会計情報の作成と利用に関する仕組み(システム)です。財務会計と異なり、どのような管理会計システムを構築するかは、経営者のセンスに依存します。

 建設業に共通する特性としては、「受注請負産業であること」、「工事種類が多様であること」、「外注依存度が高いこと」等が挙げられますが、それらに加えて公共機関や地域と深く関わってビジネスを展開するという特性もあります。したがって、建設業における管理会計システムは、企業の収益性、効率性等の観点にとどまらず、公共性、公益性の領域に対しても影響を与えることになります。

 「建設業における管理会計に関する研究会」は、管理会計に関わる様々な立場の委員が一堂に会し、建設業における管理会計のあるべき方向性を議論する場として運営されています。

 

 建設業における管理会計に関する研究会 委員名簿 (50音順、敬省略)
植松 隆多 株式会社マネジメント・ファクトリー 代表取締役社長
尾畑 裕 一橋大学大学院商学研究科 教授
菅本 栄造 青山学院大学経営学部 教授
高田 守康 日本マルチメディア・イクイップメント株式会社 代表取締役
手島 伸夫 社会保険労務士・中小企業診断士
東海 幹夫 青山学院大学 名誉教授
藤井 一郎 四国大学経営情報学部 教授、中小企業診断士
藤原 一夫 一級建築士、中小企業診断士
横田 絵理 慶應義塾大学商学部 教授

 






 

中小建設企業の会計に関する研究会

 わが国の会計制度は、従来よりシングル・スタンダードの考え方に基づき会計基準が策定され、上場企業等の大企業は、この会計基準すべてに従った日常的な処理が求められています。

一方、中小企業については、会計基準に従わなければならないという法令の規定がないため、会計基準の大筋に沿った処理を行えば、その細部まで厳格に従わなくとも問題がないと理解され、その簡便的な運用が図られてきました。
 しかし、平成17年8月1日、日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所、企業会計基準委員会の4団体が「中小企業の会計に関する指針」を、平成24年2月1日、中小企業庁及び金融庁が共同事務局を務める中小企業の会計に関する検討会が「中小企業の会計に関する基本要領」を、わが国の中小企業会計の規範として公表するに至って、わが国の中小企業会計は2階層の構造が新装され、新たな展開が図られることとなったものと理解せざるを得ない状況となりました。

 建設業界の会計制度は、長い間の業法会計(建設業法を基本とする会計)という特徴とともに、入札、契約等の公的機関との関わりを整備するための会計や経営事項審査という企業経営評価における会計情報の在り方といった、より具体的な検討課題を有しています。これらは、上場会社・非上場会社、大会社・中小会社に関わらず、統一的な制度が維持されており、問題をさらに錯綜したものにしているところです。

 「中小建設企業の会計に関する研究会」は、わが国の建設業会計、特に中小建設業会計について、建設業法との関係を踏まえながら、中小建設業会計に関わる様々な立場の委員が一堂に会し、中小企業会計のあるべき方向性を議論する場として運営されています。